美容系の転職の際、意外と選択肢に入らないのが「美容専門学校の教員」です。
ただそれもそのはず、美容専門学校の教員になるための情報はとても少ないのです。しかし教員こそ美容技術のスキルを最大限に活かせることが出来る仕事です。
そのため、このページでは美容専門学校教員の情報をまとめました。美容室等のサロン勤務から学校教員への転職を考えているのであれば、是非参考にしてみて下さい。
※美容専門学校については、時代の変化に合わせてかなり多様化しています。そのためあくまでも「一般的な美容専門学校の場合」としてお伝えいたします。
美容専門学校について
美容専門学校とは正式には「理容師・美容師養成施設」と言います。
また厚生労働大臣の認可を受けた2年制、または3年制の専修学校のことを指します。
教育内容は職業人としての資質向上だけでなく、最終的に美容師国家資格を含めた各種資格取得を目的としています。
資格の分類
国家資格 |
・国が認定している資格。 ・国が実施する試験(国家試験)に合格するか、国の認可を受けた養成施設(学校)で認定要件を満たすことで取得できる。 ・国家資格には有資格者以外は業務を行うことができない業務独占資格、有資格者以外はその名称を名乗ることができない名称独占資格、特定の事業を行う際に法律で義務づけられている必置資格がある。 ・国家資格は公的資格、民間資格より圧倒的に社会的信用が高い。 ・理美容師以外に国家資格が必要な職業には、医師、弁護士、会計士、保育士、薬剤師、調理師などがある。ちなみに自動車運転免許も国家資格である。 |
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公的資格 | ・主に省庁や大臣が認定している資格。
・公益法人や民間団体が実施。 ・国家資格と民間資格の中間的な資格だが、認定しているのが国なので社会的信用は高い。 ・最も有名な公的資格に幼稚園、小中学校の教員が取得する教員免許状が挙げられる。 |
民間資格 | ・団体や企業が認定している資格。
・独自の審査基準を設けた試験に合格することで認定される。 ・社会的信頼度は国家資格や公的資格には及ばないものの、独自に統一管理された試験・認定を行うため業界によっては一定の能力が担保されていると認知されている。 ・ネイリスト、エステティシャン、美容部員などが取得する資格、よく聞く英検(実用英語技能検定)も民間資格である。 |
理容師・美容師養成施設は日本全国に261校あります(2020年4月現在)。
美容専門学校教員の仕事としての魅力
美容専門学校で働く教員は、ほとんどがサロン勤務の経験がある美容師です。
そのためサロン勤務から学校勤務へと変わった場合、どのようなメリットがあるかお伝えします。
資格と経験を活かすことが出来る
美容専門学校の教員こそ、これまで時間と苦労を掛けて取得した「資格と経験」を存分に活かすことが出来る仕事です。
理由はもちろんその道の経験者として、これから美容師を目指す未経験者(生徒)に技術や知識を教えることが仕事だからです。
当たり前ではありますが、生徒は美容師免許を取得するための知識、勉強方法、試験の合格ポイントなど全く知りません。
生徒は今であればユーチューブ動画で見よう見まねで経験したことはあるかもしれませんが、所詮素人の真似事です。
だからこそすでにその業界の経験者であれば、これまでの自分の知識、技術は全て教えるための武器となります。
もちろん教育者、指導者としてこれから新たに身に付けなければならないスキルはありますが、それでも教育内容の半分はすでに身に付いているのです。
このため美容専門学校ほどサロン以外で自分の経験が活かせる仕事は他にありません。
受け持つ授業によっては改めて取得しなければならない資格もありますが、決してハードルは高くありません。
福利厚生が手厚い
専門学校の福利厚生は一般の企業と同等の待遇、またはそれ以上と言えます。
ちなみに一般的に専門学校は学校法人によって運営されており、所属する全ての教職員は「私学共済保険」に必ず加入します。
これは日本私立学校振興・共済事業団が私立の学校教職員を対象に行っている支援の一つです。
分かりやすく説明すると「国の大切な教育事業を担う私立学校、所属する教職員は困った時はお互いに助け合いましょう」という仕組みです。
基本的に強制加入ですが、無理やり高額な保険商品を買わされたりするようなこともなく、むしろメリットしかありません。
その代表的なメリットとして病気や怪我等の保障があります。
例えば入院し高額な医療費が発生した場合は、高額療養費・一部負担金払戻金・家族療養費付加金として費用の一部が後日支給されたりします。
また加入者が結婚する場合「結婚手当金」として8万円支給されます。さらに加入者同士の結婚だと双方に支給されるので合計16万円受取ることになります。そのためちょっとした旅行や、家財道具を購入するための資金に充てることが可能です。
ちなみに出産で休職した場合、出産日の前後98日間は出産手当金として全額ではありませんが給与が保障されます。
その他まだまだメリットはありますが、このように学校教職員の福利厚生は美容師はもちろんのこと、一般企業と比較しても手厚い内容となっています。
私立学校は国公立学校のように国から支援を受けられないため、このような制度を設け共済しています。私学共済加入条件は「常時一定の勤務時間の拘束を受ける人」です。
したがって非常勤の外部講師、パートタイマー、二ヵ月以内の勤務期間の人などは加入不可となります。
将来的に長く働くことが出来る
一般的な美容室と比較すると、専門学校は働ける期間が長いです。
なぜなら美容室のサロンワークほど労働環境が過酷ではないため、体力的負担、身体的負担が少ないからです。
例えば休日に関しては基本的に週休二日、日祭日は休み、盆と正月は暦のタイミング次第で9連休になることもあります。
また授業を始めとする業務内容も年単位、学期単位で時間割が設定されるため、計画的に仕事を進めることが可能です。
もちろんサロンのように手荒れで悩むこともなければ、閉店間際の駆け込みカット、終電ギリギリまでのレッスンはありません。
だからと言って楽かというと決してそうではありませんが、サロンワークと比較すると圧倒的に「オン・オフ」がハッキリとしているため総合的に負担は少ないです。
このように学校教員の仕事は身体の故障による戦線離脱が少ないことからも、結果的に長期間働くことが出来ると言えるでしょう。
待遇面、体力面、拘束時間など総合すると、小さいお子様がいらっしゃるご家庭の方は学校教職員のお仕事はかなりおススメです。
美容専門学校教員としてのやりがい
美容専門学校教員の仕事は、美容室同様にとてもやりがいがあります。
ここではその中から「4つのやりがい」をお伝えします。
生徒の成長
生徒の成長は教員として最もやりがいを感じる要素です。
なぜなら一つの技術を習得するのに、どれくらいの時間と努力が必要か十分すぎるくらいその苦労が分かっているからです。
例えばロッドのワインディング技術。もちろん美容師なら想像出来ると思いますが、それなりに器用な人でもそう簡単には上手く出来ません。もちろんヘアカットも同様です。
だからこそ、生徒が出来るようになった時は自分のこと以上に嬉しくなるものです。また、あまり器用でない生徒が上手く出来るようになった時は嬉しさも倍増です。
自分の教えたことで生徒が成長する。これほどやりがいのあるものは他にありません。
自分の成長
生徒の成長以上に、教える側の人としての器も大きく成長出来ます。
なぜならサロンの後輩に教えるのと、美容学校の生徒に教えるのとでは入り口が全く異るため教えるための工夫が必要だからです。
つまりサロンの後輩であれば、ある程度美容の知識や用語が分かる状態からスタートしますが、美容学校の生徒に教える場合は全てゼロの状態からスタートしなければなりません。
だからこそ「いかにわかりやすく伝えるか」「いかに出来るようにさせるか」「いかに成長させるか」がポイントとなるため、教員を続けると自然と授業の質が向上し「教えるスキル」が上達します。
さらにはどうすれば相手の心に響くか、どうすれば魂に火をつけられるかなどキャリアを重ねるごとに「教え、諭し、導くスキル」がどんどん上達します。
そのため生徒の成長はもちろんのこと、教える側の人としての器も大きく成長出来るのです。
社会貢献
社会貢献できることもやりがいを感じる要素の一つです。
なぜなら学校とは多くの生徒にとって、これから社会生活を送るために様々なことが学べる唯一無二の場所であり、さらに専門学校は「最後の教育機関」となるからです。
だからこそ資格の勉強以外に、社会人として必要な心構え、苦難を乗り越える方法、夢や目標を叶える方法など伝えなければならないことがたくさんあります。
もちろんその時すぐに伝わらないこともありますが、生徒には社会に出れば必ず分かる日や、気付く日がやって来ます。生徒にとってあの時の教員の一言が、後々生徒の背中を押すのです。
このように考えると、たかが専門学校とはいえ社会の中では大きな責任と役割を持っていることが分かります。
あなたが教えることが社会全体の役に立ち、この国の未来を作っていくのです。
生徒の笑顔
「生徒の笑顔が見れること」やはり何といってもこれにつきます。
美容専門学校にメインで通う生徒の年齢は19~21歳くらいですが、やはりまだまだ多感な時期であるため日々感情や心の状態が変わります。
そのため生徒に振り回されることもありますが、生徒は心の奥底では「もっと頑張りたい」「もっと成長したい」「美容師として成功したい」と願っているのです。
そして「先生!出来るようになりました!」と胸を張って言いたいのです。
だからこそ自分の教えたことで生徒が成長し、さらに成長を実感した生徒が自信を持ち笑顔になる。これこそ教員にとっての最大のやりがいです。
美容専門学校での仕事内容
学校で働くといっても、雇用形態と持っている資格、スキルで仕事内容は異なりますが、大きくは常勤である「学校教員・学校職員」、非常勤である「外部講師」に分かれます。
また小中学校のようなクラス担任制、大学のように授業だけ行う専任制など学校によって様々です。
しかし実際のところ美容専門学校では、昼間生はクラス担任制、夜間生、通信生は専任制となっている学校が多いです。
学校教員の仕事
学級担任
一学級20~30名の生徒を担任として受け持ち、学級運営や授業を行います。
そして生徒一人一人と向き合い、生徒が目標を達成するための様々なサポートを行います。
一つの学級に対して関わる時間が多いため、生徒にとって最も影響力がありとても大きな存在となります。
教科担当
学級担任のサポート業務等の裏方のお仕事はもちろん、自ら授業も行います。
比較的若い教員が多いため、生徒にとってはとても話しやすく身近な存在になります。
自分の学級を受け持たないため、夜間生や通信生の授業も担当することも多いです。
校長・学年主任など
学校や学年を治める長として全体の管理、運営をします。
管理する範囲はとても広く、生徒や保護者対応はもちろんのこと、教職員の働き方など職場環境の管理や改善も行います。
学校職員の仕事
一般的なオフィスワークと業務内容は同じで、学校運営のための業務を行います。
経理、人事、広報など学校規模が大きくなればなるほど細分化されていきます。
業務の流れとしては学校は基本的に1年単位で同じことを繰り返すので、慣れてしまえば比較的に楽です。
外部講師の仕事
非常勤講師として学校側から依頼を受け、授業のみを行います。
協会の認定講師や、独自で教育プログラムを確立している方が多いです。
授業は実践で役立つ内容が多く、最新テクニックが学びたい意欲的な生徒からとても人気があります。
美容専門学校教員になるための資格
基本的に幼稚園や小中学校の教員になる際に必要となる教員免許は不要です。
しかし実際に美容専門学校教員となり、授業を受け持つ場合は理容師美容師養成施設教員資格認定研修会に参加し資格を取得しなければなりません。
また、資格は受け持つ科目ごとに認定研修会に参加することが必要ですが、美容専門学校に所属してから取得するのが一般的です。
主な授業は以下の通り。
資格科目 | 受講資格 |
---|---|
①美容実技、美容技術理論 |
美容師の免許を受けた後、美容所において実務に従事した期間、または美容師養成施設においてそれらの教育に従事した期間が通算して4年間以上になる者 |
②関係法規・制度 | |
③衛生管理 | |
④保健 | |
⑤香粧品化学 | |
⑥文化論 | |
⑦運営管理 |
もちろん全て取得しなければならないことはありませんが、歴の長いベテラン教員は①~⑦まで全て取得している場合が多いです。
また、上記資格は文部科学省が設定した科目(必修科目)に関する授業を行う場合に必要な資格です。
しかし、各学校が独自に設定している科目(選択科目)などで、非常勤の外部講師として授業を行う場合は上記資格は不要です。
また、同じ美容系の専門学校でも美容師ではなく、ネイリスト、エステティシャンを目指す学校で授業を行う場合も上記資格は不要です。
しかし、その際はJMA日本メイクアップ技術検定協会、JNA日本ネイリスト協会、AEA日本エステティック業協会などの認定講師の資格が必要な場合があります。
以上、少し複雑かもしれませんが、各学校の特色によって必要な資格もかなり大きく変わってきます。
上記資格の⑥文化論、⑦運営管理は美術教論や社会教論の免許取得者であれば、資格認定研修会への受講資格があります。
そのため美容師以外の方でも資格さえ取得出来れば、美容専門学校で授業を行うことが可能です。
美容専門学校教員に向いている人
教員の仕事を「向き、不向き」だけで決めつけるのは良くありませんが、以下の項目に一つでも当てはまるも人は教員の仕事に間違いなく向いています。
責任感がある人
教員として最も必要なことは責任感です。
と言うのも関わる生徒一人ひとりと丁寧に向き合い、最終的に全員を国家試験合格へと導かなくてはならないからです。
もちろん美容専門学校には勉強が得意な生徒もいれば、あまり得意でない生徒もいます。だからといって仮に国家試験に合格しなかった場合生徒のせいには出来ません。
生徒はこれからの美容業界を創っていく貴重な人材なのです。
国家試験課題の内容、徒弟制度の名残が色濃く残る業界、など時代の流れから見ると賛否はありますが、「美容業界全員で一人の技術者を育てる」という日本独自のシステムは世界的に見ても良い環境です。
そのため美容業界という大きな枠の中で専門学校というパートを自分が受け持ち「一人残らず国家試験に合格させ美容の現場に送り込む!」という強い責任感が必要です。
小さな変化に気付ける人
相手のことを細かく観察し、小さな変化に気付けることも大切です。
なぜなら生徒は何か困った時には必ず小さなサインを出すからです。
もちろん生徒指導の上でその時声をかけるかかけないかは、時と場合によります。しかし小さなサインに気付かないのであれば手助けも何も出来ないのです。
目の前の生徒は何を考え、何に悩み、何を求めているのか。日々の関りの中で小さな変化に気付くことはとても重要です。
その小さなサインに気付ける人は、必ず生徒に頼りにされる教員です。
人と話すのが好きな人
話すのが得意、不得意ではなくお話することが好きな人は教員の仕事に向いています。
美容師は黙っていても技術さえ上手ければ仕事は成立しますが、やはり教員は話すこと自体が仕事です。
そのためとにかくお話が好きな人は教員の仕事に向いていますし、授業以外でも進路相談や保護者対応など話すシーンは多々あります。
ちなみに話すことが不得意であっても、慣れることでかなりの部分は改善されるので「場数を踏むこと」でほとんどが解決します。
後はギャグが滑っても落ち込まないくらいの強いハートがあれば最強ですね!
好奇心旺盛な人
新しいことに挑戦することが好きな人にとても向いています。
人は年齢を重ねると、どうしても頭が固くなり柔軟性がなくなります。
しかし新しいことを知りたい、新しい価値観を受け入れたい、もっと変わりたいと思っている人は間違いなく教員向きです。
教員は続ければ続けるほどキャリアも年齢も上がりますが、教える生徒の年齢だけは常に同じです。そのためジェネレーションギャップは深まる一方ですが、逆にそれを楽しめるくらいの好奇心と心の若さがあれば十分です。
教員の仕事は「向き、不向き」もあるかもしれませんが、一番は必要な要素は「覚悟」です。あなたの情熱をぜひ生徒に注いで下さい。
美容専門学校教職員の求人
美容室数と比較すると学校数はとても少ないです。そのため転職を少しでも意識したのであれば少しでも早い段階で情報を集めましょう。
動いたもん勝ち、まさに先手必勝です。
求人のタイミング
学校教職員の退職は主に年度終わり(3月)が多いため、求人のタイミングは年度末の2~3か月前となる12月~2月にかけて多くなります。
しかし学期終わり(7月、12月)にも人が抜けることもあるため、年間を通してみると求人は何度かありますが、大衆美容室のように年中求人広告を出していることは少ないでしょう。
情報収集
上記のような理由から、求人募集の情報収集は就職サイトに登録する方が確実です。
そして少数ながら教員の仕事を探している方は一定数はいるため先手必勝です。
また母校を訪ねるのも一つですが、必ずしも雇用条件が良いとは限りません。
生徒として良い思い出があったとしても、生徒として学ぶことと、教員として働くことは全くの別物です。
下手に母校を訪ねて断りづらくなる前に、比較対象を探すためにも求人サイトを最大限に活用し職場選びを成功させましょう。
最後までご覧頂きありがとうございます。
管理人である私は美容専門学校に10年以上勤務していたので、その良さがとても分かります。
専門学校教員の仕事はおススメです!せっかく取得した美容師国家資格なので、最大限に利用しましょう!
あなたの成功をお祈りしております!